王墓山古墳(おうはかやまこふん)を過ぎて大池のほとりをさらに西に進むと、善通寺大野原線沿いに古墳公園として整備された宮が尾古墳があります。7世紀初頭に造られた円墳で、長さ9mの横穴式石室を持ちます。
宮が尾古墳が発見されたのは昭和41(1966)年1月で、当時は古墳全体が土に埋もれていましたが、地上でみかん畑を耕作しているときに、偶然地面に石室につながる穴が見つかり、古墳が発見されました。このときの古墳の調査で、石室の壁面には細い線で刻まれた線刻画があることがわかりました。
このような線刻画の装飾古墳は全国でも珍しく、四国では香川県でしか確認されていません。線刻画の絵は、玄室(げんしつ/棺を納める部屋)の奥の壁に人物群、馬に乗る人物、船団などが克明に描かれています。この人物群は身分の高い人が亡くなった時に本葬の準備が整うまでに行われた殯(もがり)の儀式の様子を描いたものと考えられ、全国的にも注目されています。また玄室の側壁には、かぶり物をして剣を持つ武人像が描かれています。宮が尾古墳の前の時代に造られた王墓山古墳では冠帽や鉄剣、馬具が出土しているので、武人像や馬に乗る人の絵は、当時地域を治めていた豪族の姿を描いているのかもしれません。
宮が尾古墳のすぐ隣には宮が尾2号墳があります。こちらは平成6年度から実施された宮が尾古墳保存整備のための発掘調査中に、石室の石材が僅かに残っている状態で発見されました。2号墳の線刻画は、羨道(せんどう)側壁の石材の間を埋める小さな石に、はしご状の絵が見られるのみでしたが、この絵は驚いたことに、宮が尾古墳の墳丘の盛土中から発見された割れた線刻石材と一致することがわかりました。この状況から、2つの古墳は同時に造られており、そのときに割れた線刻石材をそれぞれの古墳で利用していたことがわかりました。
通常は石室には入れませんが、公園内には詳しく解説したパネルや壁画、石室の実物大模型などが展示されています。
4月29日の「古墳の日」には石室内も一般公開されます
宮が尾古墳
珍しい線画が描かれた装飾古墳