旧陸軍第11師団司令部(現:陸上自衛隊善通寺駐屯地)の向かいには、駐屯部隊の施設が並んでいます。その中でひときわ目をひくのが赤煉瓦の3棟の建物です。南、北、東に放射状に配置されたこの建物は、旧陸軍第11師団兵器庫で、明治42(1909)年、明治44(1911)年、大正10(1921)年に建てられました。ドイツ人技師が設計したといわれ、施工したのは地元の小田常太郎氏です。
天井は高く屋根裏もある2階建てで、屋根は切妻造(きりづまづくり)の瓦ぶき。屋根裏は当時の最新設計の合掌造りで、構造は今は少なくなった煉瓦造りです。長さ60mを超える各棟には100ヶ所前後の縦長の窓があり、花こう岩のひさし台と鉄製の両開きの扉がついています。それぞれ微妙に異なるデザインも見所です。
構内には桜、塀の外の「ゆうゆうロード」には銀杏などの街路樹が植えられ、反対側には中谷川の流れを利用した水辺の歩道が続き、気持ちのよい散歩道です。善通寺の五重塔を背にした赤煉瓦の建物は、歴史の厚みを感じさせる善通寺市ならではの風景です。
現在の西中学 校のあたりには昭 和17(1942)年、国内初の捕虜収容施設として開設された善通寺俘虜(ふりょ)収容所があり、終戦時には1,739人もの人々がいたと伝わります。これにより師団がありながら空襲を免れ、今もなお貴重な明治の建築物を見ることができるのでしょう。
旧陸軍第11師団兵器庫 ※現:陸上自衛隊善通寺駐屯地倉庫
まちの人々に親しまれている赤煉瓦の建物